植物特有のATLタイプユビチキンリガーゼ

摘要

タンパク質の翻訳後修飾の一つであるユビキチン化は，細胞周期，DNA修復，情報伝達，転写調節，品質管理など，生命現象のさまざまな場面で重要なシグナルとなることが知られている．近年，植物においても，光形態形成，植物ホルモン応答，病害抵抗性機構，自家不和合性など，多くの生理機能の発現制御にエビキチン化が関与していることが次々に報告されている（1）．タンパク質のエビキチン化反応は，ユビキチン活性化酵素（El）－エビキチン結合酵素（E2）－ユビキチンリガーゼ（E3）による複合酵素系で触媒される．E3はエビキチン化される標的タンパク質の選択性を担う重要な酵素であり，E1，E2に比べその構造には幅広い多様性が見られる．たとえば，シロイヌナズナでは，El遺伝子は2個，E2遺伝子は45個であるのに対し，単量体型と複合体塑があるE3では構成要素を合わせると約1，200個の遺伝子が存在する（2）．しかし，大部分のE3の生理機能については，突然変異体の原因遺伝子として単離されたものや，それらと相互作用するタンパク質として同定された例を除き未知のままである．