プロテアソームと免疫識別の制御見えてきた内在性抗原のプロセシング酵素系としての役割

摘要

世の中が無垢で美しいというのは，絵画の中のことであり，現実（生命科学）の世界では幻想である．己の生存のために他者を破壊することは，生命の存続に不可欠であり，他者の生命を虎視眈々と狙っている無数の生物の集団が共存する世界が清純であるわけがない．したがって，生物が無頼の侵入者による絶え間ない破壊に遭遇することは日常茶飯事である．この汚濁にまみれた混沌とした状況にあって，生物の存続を可能にしているのは免疫の働きによる．しかし，生命を危うくする物体とは何であろうか？ 敵を知り，己を知ることは，戦乱における勝者の極意である．これは免疫システムを発動させる場合の戦略にも通じる．問題なのは，何が有害で何が無害かを生物がいかにして認識するかであり，免疫学的に言えば，自己と非自己をいかにして識別するかである．