エボラウィルス病終息に向けて

摘要

西ァフリ力で甚大な被害をもたらしたエボラウィルス病（Ebola Virus Disease: EVD)流行は対策強 化の成果として現在のところほぼ終息している.EVDに関する新たな知見が多く得られた一方で，不明な部分も多く残されている.エボラウィル スが患者体内に長期間存在し感染源になりうることが示されたがその機序は不明である.治療におい ては画期的な治療方法はなぐ古典的な支持療法が基本となることに変わりはない.新しく開発され たワクチンは曝露後接種であつても高い有効性を示した.検査では迅速診断キットの開発が進められ ている.現地では「患者発生ゼロの継続」を目標として，患者発生時の早期探知及び対応，医療施設におけ る基本的な感染対策の強化が進められている.落ち着いた状況になりつつあるが,エボラ生還者(Ebola survivor)が偏見や後遺症に悩まされている状況は続いている.流行によつて医療，経済や教育に至るまで社会全体がダメ一 ジを受けており，流行再燃のリスクも 依然として存在している.保健医療システムを包括的に強固にすることがEVDを含めた様々な感染 症の流行への備えとして望まれる.