II二 世紀の農業像、社会経済像を考える基本視点: 金銭経済から文化経済への構造転換 －人間性回復と現代産業の展望－

摘要

「テロリストが人質と死のゲームを繰りひろげ、通貨は第三次世界大戦のうわさのなかで揺れ動き、大使館が炎上し、あちらでもこちらでも武装警察官が出動準備を急ぐ世のなかである。新聞の見出しを見るたび、恐怖に胸がおののく。 恐怖のバロメーターである金地金の価格は史上最高。銀行は身震いし...行政は麻痺し、打つ手もないというざまである」これは、一九八〇年に刊行され、ミリオンセラーとなったアルヴィン、トフラー『第三の波』の目頭にある一節である。 二〇〇三年の現在にも拡大されて継続している「この恐怖」の原因を、彼は、「大量生産大量消費時代の終焉」と、それにふさわしかった権力集中型、画一型、命令型の管理システムを頑迷に守ろうとするエリートたちの知性の欠如に求めている。 たしかに、大量消費大量生産、大量廃棄型の産業社会は、激しく変化する「市民の個性的な欲求やニーズ」さらには潜在的な需要に応えることができず、予測を誤っては巨大な過剰設備と不良債権の山に押しっぶされそうになり、低金利と財政赤字で調達した産業資金は、国際的な投機活動の大波に呑まれ、持続的な金利収入の低下と税や医療、福祉負担の増加は、消費財市場の長期的停滞を招いている。 金銭的価値の最大化を図る企業の戦術や戦略は、前門の虎である「過少な消費」に行く手を阻まれ、後門の狼である金融資産の減少に青くなって立ちつくしている。