ストレス環境における作物の安定多収栽培技術 －イネの畑栽培研究から見えること－

摘要

作物の生産性向上を考えるとき、作物の潜在的生産能力を積極的に高める研究、技術開発と同様に、この能力を安定的に発揮させるための研究が必要である。実際の栽培環境では（概念的な理想条件に対して）多少なりとも何らかの非生物的ストレス要因が存在することが多い。ストレス下の収量形成において、作物は単にストレスに対して受動的に機能低下を示すのみならず、適応的な生理、形態的変化を発揮する。これが遺伝子型×ストレス環境の交互作用が往々にして見られる要因でもある。このため、ストレス条件に着目した栽培環境の特徴付けとそこでの安定多収研究については、作物診断を基礎とする作物科学が重要である。このような点について、イネの畑栽培における耐乾性と多収性を例にして検討してみたい。