テンサイ細胞質雄性不稔の花粉稔性回復は核遺伝子型背景の影響を受ける

摘要

細胞質雄性不稔性（CMS)の発現は、CMS を促すミトコンドリアと、稔性回復遺伝子Rf の相互作用で説明される。しかしながら、圃 場レベルでは、しばしば形質発現にブレが生 じ、これが育種を進める上で障害となりうる。 CMS発現に影響を与える要因として、環境 や、核遺伝子背景などが考えられる。テンサイ(Beta vulgaris L.)においては、 CMSを利用したハイプリッド育種が盛んに 行われている。テンサイ育種における維持系統（いわゆるb系統）遺伝子型（[N]rfrfy)の 選抜には、通常検定交配が行われるが、維持 系統遺伝子型の頻度が非常に低いため、きわ めて効率が悪い。著者らはテンサイがのク ローニングを完了しており、rfrf個体を、そ の他の遺伝子型と判別することができる。こ のシステムを利用してrfrf個体を予め選抜す ると、維持系統選抜効率が向上することを見出した（Moritani et al. 2013)。しかしな力ら、 検定交配を完全に省略するには至らず、また 以外の遺伝子型でも、花粉稔性の低い個 体が出現することもわかった。従って、CMS 発現に影響を与える、何らかの未知の要因が あるものと考えられた。