諫早湾の生物一有明海特産種の宝庫(5): 有明海の生物多様性保全の意義

摘要

まず最初に有明海を特徴づけている生物相成立についてふりかえってみよう．このシリーズの第1回（52巷10号，1998年）に下山正一氏が説明しているように，現在から1万5千年前の最終氷期の最盛期には海水面は現在より約155mも低下しており，現在の東支那海の陸棚はほとんど陸化して広大な平原となっていた．過去数回の間氷期には海水の侵入があり，その時期の地層に大陸沿岸性貝類の遺薪が出土するとはいうものの，現代と直凄つながる有明海はわずか1万1千年以下の歴史しかないことになる．