心の遺伝と進化

摘要

科学者は，人間自身を知るために脳とその働きである心に研究の焦点を当て始めたが，卸こ脳と心を理解するには，それらを広いバックグラウンドー遺伝と進化一において眺め直してみることが重要だ．ティンバーゲンは，動物行動に関する問題は，機能，発達，生存価，進化の四つの視点を給食して考察する必要があると述べたが，彼の指摘は脳と心の問題にもあてはまる．人間行動遺伝学と進化心理学は，1980年代から急速に発展し，車の両輪のように補い合いながら，それぞれ，脳と心の遺伝の問題と，適応、進化の間取こ取り組んできた．人間行動遺伝学は，「氏か育ちか」という古くて新しい問題に分子生物学や土的遺伝学．多変量解析等の手法を駆使して迫ろうとしている．進化心理学は，適応や共進化，トレードオフといった進化生物学の基本理論に基づき，心の由来について実証的な研究を進めている．人間行動遺伝学と準化心理学の研究動向を紹介する．