利他行動は近所付き合いすると進化する? --計算機と数式で疑問に迫る--

摘要

交際範周が身の回りに限られることが多いと，同じ相手と頻繁に接触しやすくなる．このとき，利他行動は進化しやすいだろうか? コンピューターシミュレーションや数学モデルを用いて考察した．モデルには利他個体と利己個体の2種類がいて．「反復囚人のジレンマゲーム」を行う．このゲームでは利他個体は利己個体に暴利を食られやすいが，利他個体同士でゲームを続けると高得点になる．個体を碁盤の目のように配置し（格子モデル），最近接個体とゲームする．個体の死亡確率や増殖確率はゲームの得点によるものとする．その結果，（1）同じ相手とつきあう確率が高いと，格子モデルと確率性のおかげで少数派でも利他個体同士でかたまりやすくなった．すると利他個体はお互いに協力し合って得点を高め合い，利他行動が進化した．（2）格子モデルでは相手の得点を下げる行動（スパイト行動）が進化しやすくなる傾向もみられた．