昆虫が利用する生物間攻防分子－その機能と役割

摘要

昆虫は毒に代表されるさまざまな生体間攻防分子を用いている。昆虫は数と種類が多い生物の一つであるため，まだ知られていない生理活性分子が埋蔵されていると期待される。ここでは，社会性のハチを題材にして，その毒や巣から得られた生理活性分子の機能と役割について紹介する。ヒトに害を及ぼす昆虫の代表例としては，ハチやドクガがよく知られている。その他，ハンミョウ，アリガタハネカタシ，サシガメ，アブなども痛みや腫れを誘発する毒をもつ。クモやサソリまで範囲を広げると，その数はさらに増える。成分研究が進み，毒の分子構造とその作用機序が明らかになっているものも少なくない。昆虫は，ヒト以外の生き物に対しても毒を使う。たとえば，社会性のカリウドパテ（スズメパテやアシナガパテ）の祖先で，スズメパテやアシナガパテの近隣寝である独居性のドロパテは，ガの幼虫を狩る（麻痺させる）た裾こ毒を使う。毒の役割が社会性の進化とともに変化した例でもある。