核磁気共鳴で見る －－水溶液中のタンパク質とDNA－－

摘要

生体の細胞の特性はどの遺伝子をタンパク質として発現するかで決まる．遺伝子の発現はDNAからRNAを読む転写レベルで調節されている．特定の遺伝子の発現のためには特定のDNAに結合する転写国子が活性化される．転写因子がどのような機構でDNAの塩基配列を識別して結合するのかが転写因子とDNAとの複合体の立体構造に基づいて解析できるようになってきた．赤血球の分化に関連する転写因子で原がん遺伝子産物のc－Mybタンパク質がDNAの塩基配列を認識している様子を核磁気共鳴（NMR）による構造解析に基づいて紹介する．DNAの大きな溝にタンパク質のらせん構造（ヘリックス）が入り込んで，ヘリックスから突き出たアミノ酸がワトソンークリック製の水素結合を作っている塩基対をDNAの外側から認識していた．