乳量および乳成分率の環境要因を補正した標準成績による飼養管理状況の把握

摘要

乳牛の検定日成績は、分娩季節、乳期、牛 群などの環境要因の影響を受ける。そのうち、 人為的でないものを補正すれば、条件の異な る個体間の成績でも比較できることから、環境 効果を補正した成績は、牛群管理の指標とな る。また、補正は環境ごとの平均値を用いて 行うこと力ゝら、猛暑などの例年とは異なる気候 による乳生産への影響の大きさを把握できる。 アメリカの酪農における暑熱による経済的な損 失は、暑熱対策をした場合、しない場合よりも年間約6億ドル少ないとされており！1)、暑熱の 影響を把握することは、経済的損失を抑制す るために重要である。わが国の牛群検定では、 家畜改良事業団が発行する検定成績表に、 乳量について環境の影響を補正して標準化し た標準乳量を掲載し、実際の酪農家に管理指 標としてフィードバックしている"。しかし、乳 量だけではなく、乳成分形質についても、人為 的でない環境効果を補正した値を示すことで、 牛群管理のためのより多面的な情報を提供でき ること力;'期待される。また、エネルギーバランス の指標としては、乳脂率の乳タンパク質率に対 する比（FPR)があり、その正常値は1.0-1.4 に相当する"。FPRが正常範囲より低い場合 はル一メンアシドーシス、高い場合はケトーシス、 跛行、乳房炎、卵巣嚢腫、胎盤停滞、子宮炎、および第4胃変位のリスクが高まるとされている。