硫黄増感を施した臭化銀粒子上における潜像中心の形成位置の研究第3報チオシアン酸カリウムによる潜像中心の形成位置の制御

摘要

粒子表面が主に｛111｝面からなる臭化銀乳剤粒子をチオ硫酸ナトリウムで硫黄増感する際にチオンアン酸カリウムが存在すると，高照度相反則不軌が改善され，シアニン色素による固有感度の低下が小さくなった．潜像小心の形成位粁を抑止現像法で観察したところ，チオ硫酸ナトリウムで硫黄増感された平板状臭化銀乳剤粒子の潜像小心は｛111｝面からなる主平面上に主に形成されていたが，チオシアン酸カリウムの存在下で硫黄増感すると｛100｝面が存在する側面部に選択形成された．チオシアン酸カリウムは，チオ硫酸ナトリウムからの硫化銀の生成を｛100｝面上においては促進し，一方｛111｝面上においては僅かに抑制した．またチオシアン酸イオンは｛111｝面よりも｛100｝面により多く吸着した．これらの結果は，チオシアン酸カリウムが臭化銀乳剤粒子の｛100｝面上により多く吸着し，銀イオンと錯体を形成して表面近傍の銀イオン濃度を局所的に増し，｛100｝面上での硫化銀の生成および硫黄増感中心への成長を促進することを示唆する．一方，｛111｝面ではこの様な促進作用は起こらない．この結果として，チオシアン酸カリウムの存在下で硫黄増感すると潜像形成の競争に強い潜像中心が｛100｝面に選択形成されると考える．