慢性壊死性肺ァスペルギルス症に対するアムホテリシンB脂質製剤4時間投与の安全性の後方視的検討

摘要

2007年1月から2011年4月に産業医科大学病院および関連施設においてアムホテリシ ンB脂質製剤(liposomal amphotericin B: L-AMB)が投与された慢性壊死性肺ァスペル ギルス症24例において，L-AMBを4時間で点滴投与した群（4時間投与群）と，3時間 以下で点滴投与した群（3時間以下投与群）について，臨床背景および安全性について 後方視的に比較検討を行った。L-AMB 3時間以下投与群と比較して，4時間投与群は投与期間中における血清力リウム 値の低下幅が有意に小さく ， 4時間投与を行うことにより投与後の血清力リゥム値の低下 が抑えられる可能性が示唆された。また，血清クレアチニン値，AST値，ALT値，白血球 数，血小板数の変動については両群に有意な差は認められなかった。レAMBの点滴時間と安全性について，特に血清力リウム値の変動について検討された 報告はない。L-AMBは抗真菌薬の中でァスペルギルスに対して殺真菌的に作用する薬剤 の一つであり，他にアムホテリシンBデォキシコール酸塩（D-AMB)やボリコナゾ一ル がある。臨床的に重症の真菌感染症例で用いられる場面も多く，患者の全身状態が悪い ことが多いため，血清クレアチニン値や血清力リウム値の変動に十分注意して用いるこ とが重要であるが，L-AMBの点滴投与時間を延長することにより投与中の血清力リウ厶 値の低下を抑えることができる可能性が示唆された。