眼球型ディスプレイによる立体的な視線提示がモバイル端末を介した物理的遠隔協調対話における注視誘導におよぼす効果

摘要

複数の参加者が現実世界の実オブジェクトに対して協調して作業を行うことは，「物理的協調作業」(collaborative physical tasks) と呼ばれている[2]．参加者が同じ場所で物理的協調作業を行う場合には，会話中に実オブジェクトを参照する際に，視線やジェスチャといった非言語的情報が重要な役割を果たす[3][4]．しかし，ビデオ通話においてこれらが平面のモニタに表示される[5]と，三次元的な情報が正しく伝わらなくなるため，その効果が失われてしまうことが指摘されている[6]．特に注視方向に関しては，モナリサ効果 (Mona Lisa effect) と呼ばれる現象が良く知られている[7]．これは，正面を見ている人物の顔画像が平面上に提示されている場合，鑑賞者がそれをどの位置から見ても，肖像画の視線が常に自分を見ていると感じる現象である．これらの問題により，物理的協調作業を遠隔で行った場合に作業効率が低下することになる．