鳥類の非発声音コミュニケーションの機能と進化: 求愛信号の多様性からの考察

摘要

鳥類のコミュニケーションにおいて，音声は重要な役割を果たしている。その中には，ウグイスのさえずりや暁を告げる鶏鳴のように，日本人にとって馴染み深いものも多くある。学術面でも，生態学や行動学，神経科学の各分野において，鳴禽類を中心とする音声コミュニケーション研究は大きな役割を果たしてきた。しかし，これまでの研究知見はもっぱら発声に焦点をあてており，声以外を介する音信号は見過ごされがちである。キツツキ科鳥類のドラミング音[1]などごく限られた事例を除いて，鳥類の非発声音コミュニケーションはあまり知られていない。そこで本稿では，発声を介さない音に焦点をあて，鳥類の音声コミュニケーションの豊かさの見過ごされがちな側面について解説したい。