JIS規格「機械製品の信頼性に関する一般原則」の発行と今後の展望

摘要

機械製品の設計，製造，維持の各段階での安全の確認は，機械分野では基本的に安全係数によって行われる.規格· 基準において，安全係数の数値が掲載され，材料のばらつきなどの不確定要因に対する安全裕度の意味がある.その 典型的な使い方が，材料の許容応力値の設定であり，基本強度を安全係数で除した値として設定される.このような 考え方は材料力学にも記載される基本事項であり，機械分野では今日でも基本的にはこの考え方が広く適用されてい る.設計段階のみならず，製造，維持の段階においても基本的には状況は同様である.設計者にとっても，審査する 側にとっても極めて簡単な方法であり，長年，この方式で設計が行われてきた.しかし，機械製品に対するリスク管 理の要求の高まりから，この方式の問題点が検討され，信頼性設計導入の機運が高まっている.これは設計段階のみ ならず，維持段階での供用適性評価においても同様である.筆者は，学位論文で信頼性工学をテーマとして以来，信 頼性工学と関連する研究テーマに取り組んできたが，我が国の取り組みは，どちらかというと受け身であり，本格導 入には至らないことにもどかしさを感じてきた.その中で，信頼性工学の一般原則にかかわるJIS規格を制定するこ との重要性に思い至った.日本機械学会や日本高圧力技術協会の研究会活動等を通じて，JIS規格の発行にまでこぎ つけることができた.ここでは，本規格の背景や，課題，内容，この規格の応用事例とともに，今後の本規格の発 展の方向性について示す.