車載モータとディファレンシャルギアを持った電気自動車におけるスリップ率制御に基づく駆動力制御の高速化の提案

摘要

地球温暖化や化石燃料枯渇問題の対策として電気自動車（Battery Electric Vehicle: BEV）やハイブリッド自動車（Hybrid Electric Vehicle: HEV）が注目され出して久しい．当初は環境性能に主眼を置いて開発が行われてきたが，近年では電気駆動モータの優れた応答性や正確な力行回生トルク制御を使った快適化技術，車両運動性能制御技術が次々と提案されている.我々は電気駆動モータの優れた特徴を車両運動制御へ応用する研究として，スリップ率ベースの駆動力制御に着目し研究を行っている．この制御には航続距離延長，アンチスリップによる安全性，頻繁に路面トの変わる環境下の快適な走行性といった多くの利点が期待できる．電気自動車のスリップ率制御に基づく駆動力制御方法として，従来は制御性に優れるインホイールモータ(IWM)による駆動力制御法が提案されてきたが，近年ディファレンシャルギアを搭載した1モータタイプの電気自動車についてもスリップ率制御に基づく駆動力制御法が提案されている．本稿ではディファレンシャルギアを持つ1モータタイプの電気自動車のスリップ率に基づく駆動力制御の高速化手法の提案と，寒冷地試験結果の報告を行う．