DNNによる防災放送音の識別とその住宅地域内への伝搬可視化

摘要

東日本大震災が契機となって防災行政無線による屋外の拡声放送（以降，「防災拡声放送」と呼ぶ）の内容がよく聞きとれないという問題が露呈し，日本音響学会でも専門の研究委員会が立ち上げてこの問題に対する討議を続けている。これまで防災拡声放送の定時放送を長期観測した結果から，気象条件によって変わる屈折パスの影響で聴こえてくる方向や音圧が日々変化することを報告してきた。音波は逆風条件などで屈折経路が上向きとなり，直接音が到達しないシャドウゾーンが形成されるとその中では音声が非常に聞き取りにくい状態となる(Fig.1 左図)。また，順風条件や温度逆転で音波が下向き屈折となっていたとしても，音波の屈折経路の高さと伝搬経路の間にある建物などの遮蔽物の高さとの兼ね合いで遮蔽効果によって聞こえが悪くなる場合も少なくない(Fig.1 右図)。