ワイヤレスセンサシステムのためのフレキシブル熱電発電デバイスの開発

摘要

本研究は，ワイヤレスセンサシステムのためのフレキシブル熱電発電デバイスの開発，および開発したデバイスを用いた無線通信の評価を目的とする．多数のセンサを配置して計測したデータの無線通信を行うワイヤレスセンサシステムの電源として，フレキシブル熱電発電デバイスが注目されている．フレキシブル熱電発電デバイスは，熱源に貼り付けて用いるシート状のフレキシブルなデバイスであり，ゼーベック効果を用いてデバイス内に生じた温度差を電力に変換する．熱源の表面形状にかかわらずに，また，デバイス内に温度差さえ生じれば熱源の温度にかかわらずに発電可能なため，低温産業排熱といった現状では回収が難しい排熱を回収してセンサを駆動できるようになることが期待されている．従来のフレキシブル熱電発電デバイスは，熱電素子に材料自体が柔らかい有機半導体を用いることで，デバイス全体としてのフレキシブル性を実現しようとする研究が多い．一方で，ビスマス?テルル系を代表とする無機半導体の熱電素子と有機半導体の熱電素子を比較すると，無機半導体の熱電素子の方が現状では発電性能が優れているといえる．そこで我々は，硬くて曲げることができないが発電性能の良い無機半導体の熱電素子を用いたまま，デバイスの構造を工夫することで，デバイス全体のフレキシブル性をも実現することを提案している．