多軸鍛造加工を施したAl-Mg－Sc系合金の変形挙動のひずみ速度·温度依存性

摘要

近年，巨大ひずみ加工によって作製されたfcc純金属の超微細粒材において，塑性変形の活性化体積が粗大粒材と異なる温度依存性，すなわち活性化体積が温度の低下とともに増加する，逆温度依存性を持つ温度域が存在することが報告されている［1］。また，fcc純金属における活性化体積は大きな粒径依存性を持つことも報告されている．このようなfcc純金属の示す，活性化体積の大きな粒径依存阻温度依存性について，加藤らは，粒界からの転位の放出を考慮したデピニングモデルを用いて定量的に説明している．しかし，結晶粒内に固溶原子や微細な析出物が存在する場合の活性化体積の温度依存性への影響に関しては明らかにされていない．粒内に微細な析出物が存在する場合には，転位の析出物乗り越え過程が変形を律速する事が予想され，fcc金属超微細粒材の示す活性化体積の特異な温度依存性が変化することが予測される．本研究では，多軸鍛造加工（MDF）法で作製したAl-Mg－Sc合金超微細粒材を用いて，粒内に微細Al_3Sc析出物を分散し，活性化体積の温度依存性を調査した．