雰囲気制御型熱天秤装置によるアルミニウムドロス発生過程のその場観察

摘要

アルミニウムの溶融プロセスでは、溶湯表面にドロスと呼ばれる生成物が不可避に発生する。ドロスの主成分は酸化物であり、他に大気中の窒素との反応により生成したと思われる窒化物や、溶湯中のNa、Caを除去する目的で投入された塩素ガスあるいは塩化物系フラックスとの反応により生成した塩化物等を含む。酸化物リッチなドロスは製品溶湯中の介在物の直接的な原因となるため溶湯表面から適宜掻き出されるが、ドロスと溶湯の混合および掻き出し時におけるドロスへの溶湯付着により、回収されたドロスは結果として50％以上ものメタル分を含hでいる。ドロスに随伴するメタル分は一部が回収されているがその回収率は50％程度に留まり、未回収メタルは主に鉄鋼産業に流出し散逸している。我が国のドロスの発生量は年間約40万トン以上と推定され、ドロス発生に伴うメタル分の損失量は決して無視できない。特に我が国では新地金の製錬を行っておらず、原料を輸入に頼っていることから、ドロスの発生量とメタルの損失量の低減は急務の課題である。