塩化コリン－尿素低共融点溶媒を利用した ZnO メソクリスタル育成とその成長様式の観察

摘要

低共融点溶媒(Deep Eutectic Solvent : DES)は、イオン液体の一種であり、通常の有機溶媒と比較して 分極率やイオン伝導率が高い、蒸気圧が非常に小さい、熱安定性が良く液相温度領域が広い、といった有益 な溶媒特性がある。中でも、尿素と塩化コリンをモル比2:1 で混合して得られる尿素-塩化コリンDES1)は室 温で液体であり、水と反応せず混和し、塩化リチウムや塩化銅(II)のような金属塩化物だけでなく、一部の金 属酸化物(Cu2O、PbO2、ZnO など)を溶解しやすいという性質がある。この特長を利用し、特定の金属酸化物 を溶解させた尿素-塩化コリンDES をその金属酸化物の非溶媒と混合することで、ナノ粒子として析出させ るというAntisolvent 法が報告されている。この方法では、通常の水溶液法と異なり金属酸化物の溶解に酸· アルカリを使用する必要が無く、これらに由来する不純物が混入しにくい点や、蒸気圧が低いため高温でも 比較的安定に反応を進行可能であるという利点がある。これまでにも、ZnO を溶解したDES(ZnO:DES)を非 溶媒に滴下することで、ZnO ナノ粒子を作製した報告2)や、一旦層状水酸化炭酸亜鉛を作製した後、熱分解 により多孔質のZnO ナノシートを作製した報告3)がある。しかし、これらの先行報告では90°C 以下の比較 的温和な条件を利用しており、DES の特長である高温の反応場を利用したわけでない。前回の報告では150°C に加熱したZnO:DES にエチレングリコールを滴下することで、特異な形状のZnO 結晶が生成することを報 告した。今回は、ZnO:DES のFT-IR 分析や、溶質濃度·保持時間変化させた際のZnO 結晶のXRD 分析や SEM·TEM 観察から、その成長様式を考察した。