摩擦撹拌インクリメンタルフォーミングにおける工具一板材の相対速度が成形性に及ぼす影響

摘要

近年，環境負荷軽減のために，輸送機器をはじめとする様々な工業製品に対して軽量かつ高強度なアルミニウム合金が検討されている．また，近年の市場ニーズは，製品の多様化により少品種多量生産から多品種少量生産に移行しており，板材成形においてはインクリメンタルフォーミング法が注目されている．そこで著者らは，これらの問題の解決を図るため摩擦撹拌インクリメンタルフォーミング法を開発した．この成形法では，強度が高く伸びが小さいためプレス成形では成形限界が低く，同様にインクリメンタルフォーミング法による成形も困難である5000系アルミニウム合金を容易に成形することが可能で，成形性が飛躍的に向上したことが報告されている．摩擦撹拌接合法では，工具と板材の相対速度が異なる場所において接合後の材料組織が異なることが報告されているため，本加工法においても工具と板材の相対速度が成形性に影響を及ぼす可能性がある．本研究では，摩擦撹拌インクリメンタルフォーミング法を用いてアルミニウム合金A5052板を成形し，工具と板材の相対速度が成形性に及ぼす影響ついて調査した．