国際財務報告基準（IFRS）とMA活動の活性化に関する考察（制度改編を戦略的に先行適用した企業におけるパネルデータ解析）

摘要

現在，世界経済が停滞状態にある中，各国は回復に向けて動いている．日本経済も，回復に向けた動きを見せる一方で，人口高齢化や長引く国内景気低迷，円高に加え，東日本大震災からの復興や税と社会保障の一体改革に伴う財源確保問題等，いぜh厳しい環境に晒されている．このような混迷した状況においても，日本の合併·買収（M&A）活動は，特に海外向け（IN-OUT）の取引で活発に行われている．直近の2011年度における件数·金額は，海外戦略強化，資源·エネルギーの安定確保等の動きを受けて，474件·7兆3,264億円に昇り，いずれも過去最高を記録している．これは，人口高齢化·国内市場の頭打ち·円高といったマクロ経済要因が影響しているものと考えられ，いわば一つの興隆期（ブーム）にあるといえるだろう．そこで，本研究においては，IFRSがM&Aにもたらす影響を分析するうえで，実証分析とシミュレーションという2つの側面からのアプローチを試みる.第1段階においては，実証面での欧州企業の資本コストを考慮し，M&A活動との関連性について分析を行った．