福祉·医療分野等における介護·看護作業の問題と解決 ISO TR12296と今後の医療福祉用具の方向

摘要

福祉·医療分野等における介護·看護作業での腰痛問題は近年深刻さが増大している．保健衛生業の腰痛により休業４日以上の労働災害件数が，2007年から建設業や運輸業などの他の産業を抜いて1位となり，2012年まで続いている（Fig.1）．保健衛生業の腰痛による労働災害件数が，2012年では全労働者の27.1%（うち19%が社会福祉施設）となっており，とても深刻な問題となっている．2012年6月に国際標準化機構（International Organization for Standardization、以下ISOとする）が，テクニカルリポートISO/TR 12296を出版した（Fig.2）．このリポートは，主にEUメンバーとアメリカによって出版された技術報告書であった．ISO/TR 12296は，人間工学技術委員会（以下ISO/TC 159とする）の小委員会（SC3）の人体計測法とバイオメカニクスによって結成されたグループで報告された．一方我が国は，2013年6月に厚生労働省が「職場における腰痛対策指針」を19年ぶりに改定した．この指針の改定では，介護/医療の腰痛対策として介護用のリフトやスライディングシートの利用と人力による持ち上げを禁止している．今回，日本の医療介護における問題について述べるとともに腰痛問題を解決してきている国々の方法について述べる．さらに福祉用具や病室や手術室などの環境についてどのように解決するべきか述べる．