油井管特殊ねじ継手の回転曲げ疲労寿命予測

摘要

従来の油井開発においては，井戸の掘削にはドリルパイプを使用し，掘削後にケーシングパイプ（油井管）を埋設するため，油井管ねじ継手には静的強度のみが要求されていた．しかし近年，ケーシングパイプにドリルビットを装着して掘削するドリリングケーシングが普及の兆しを見せており，抗井の屈曲部を通過する際に継手部に動的な回転曲げが長時間負荷されることから，油井管ねじ継手の回転曲げ疲労性能が重要になりつつある．これまでねじ継手の疲労性能は主に，実体疲労試験結果とノルウェーの船級協会が定める溶接継手母材の疲労設計基準であるDNV-B 線との比率SAF を用いて評価されてきた．実体疲労試験は共振型が主流であり，実験評価の研究例は幾つか報告されている．共振型試験では実操業の範囲で負荷される荷重条件に対応できるものの，試験機の制約上高曲げ（低サイクル疲労）を再現することが困難であるため，継手の疲労損傷モードを詳細に検討するには不向きである．継手の疲労損傷モードまで考慮した研究例はほとhどないのが現状である．本報では，まず継手の疲労損傷モードを明確化することを目的に，代表的な油井管特殊ねじ継手につき，高曲げ負荷が可能な4 点曲げ式回転曲げ実体疲労試験を実施し，材料強度と曲げ荷重の違いが損傷モードに及ぼす影響を調査した．次に損傷モードを把握した上で，回転曲げ疲労試験を模擬したFEM 解析手法について検討し，得られたねじ底の発生応力·ひずみと母材の疲労データを用いて継手の疲労寿命予測を試みた．