スイッチの操作感再現を行う力覚提示装置‐等価質量制御と反力ヒステリシス

摘要

自動車内のヒューマンインタフェースの１つであるスイッチの心地よい操作感は，操作の快適性を向上させ，製品の付加価値を高める重要な要素である．近年，機構解析等のCAE 技術の発達により設計段階で様々な特性を評価することが可能となってきたが，機器の操作感覚の最終的な評価は官能評価に頼らざるをえない．筆者らはCAD，CAE，力覚提示装置の3 つを連携させ，設計情報から機構解析や力学解析によって推定されるスイッチの運動特性を力覚提示装置によって設計者に提示し，試作を伴わずに製品の操作感を評価するバーチャルプロトタイピングという手法の開発を進めている．このシステムにおいて力覚提示装置にはスイッチの力学特性に基づいて操作感をリアルに提示する性能が要求される．スイッチの特性は変位に対する反力特性(Force-Stroke 特性)が基本である． Fig.1 はパワーウインドウスイッチのForce-Stroke 特性の一例であり，反力の極大値と極小値の間の領域を通過することで操作者はクリック感を感じる．しかしスイッチの操作感は，静的な反力のみならず運動に伴う慣性力や粘性抵抗も操作感に影響する．特にクリック時の操作感は機構の質量に依存する慣性力が重要であることが分かっている．力覚提示装置の可動部質量が実際のスイッチより大きいため，力覚提示装置において等価質量を減少させる制御が必要となる．本報告では，等価質量制御に適した力覚提示装置の機構の改善を行い，制御性能を定量的に評価した．また，反力特性のヒステリシスがクリック後の位置でスイッチを保持する操作感に影響している．実際のスイッチの反力のヒステリシス特性を再現する制御を付加することにより操作感の再現精度（リアリティ）を向上させた．