サービス化の時代の工学倫理

摘要

工学倫理は日本では2000年ごろから始まり，技術者を専門家として位置づけるという制度設計の一部として導入された。現在では高専を中心に，大学でも大半のところでは工学倫理，技術者倫理の教育は行なわれている．さて，技術者は人工物を作ることが，他の人々とは違った仕事になっている．その人が専門家として仕事をする場合に，どのような倫理問題に出会うだろうか．人工物を作って，それを販売して仕事が終わるならば，設計と製造がその仕事の中心になる．しかし，サービス化の時代には，品質の良いものを販売しても，それで済むわけはない．設計は要求仕様を満たすように人工物を作ることである．この要求仕様が，メーカーではない，発注者，事業者などと共有されることがまず必要となる．品質が良く，安い部品を大量に作ることを目指す（これならメーカー内部で問題解決ができそうである）というよりは，その人工物のユーザに当たる事業者の要望に合わせてものづくりをする，もしくは使い方の提案をすることがその仕事になる．いわば，ソリューションを提供することがサービス化の時代の技術者の仕事になる．これが何を意味するかを見ていくことにする．