熱回路網法による空気調和用熱交換器性能の予測凝縮器能力に及ぼすフィン内熱伝導の影響

摘要

空調機の省エネルギー化を達成するため，熱交換器の高性能化が重要であり，性能を最大限に引き出す高精度の性能予測技術が不可欠である．著者らは，これまでに熱交換器内を複数の要素に分割して熱抵抗で接続する熱回路網法を適用し，熱交換器内部の温度分布の影響を考慮した高精度の予測手法の検討を進めている．既報において，著者らは，熱交換器を凝縮器として用いた場合の性能を予測する手法として，比較的少ない要素分割数で冷媒側の相変化を表現できる有効比熱モデルと，冷媒の流れにそった静圧分布の熱交換能力に及ぼす影響を考慮できる等価吸熱モデルを導入し，熱交換器の能力予測値を検証実験結果と比較することにより妥当性を確認した．本研究では，上記手法を凝縮器の能力予測に適用し，凝縮器内の冷媒温度分布とそれに起因するフィン内熱伝導の影響の定量化を行う． 空調用熱交換器のフィン内熱伝導に関連する研究としては，暖房時の吹き出し気流の高温化を目的として熱交換器の列間を分断し，冷媒の過熱ガス域を拡大する効果を検討した伊藤らの研究があり，その中で，列間のフィン分断の有り無しによるフィンの温度分布の差異を数値解析により予測している．しかし，その他には，冷媒流路パターンに依存する冷媒温度分布の変化とフィン内熱伝導の関係の定量的な把握は行われていないようである．そこで，本研究では，フィン間熱伝導を考慮した最適冷媒流路パターン設計の可能化を最終的な目標ととらえ，その１ステップとして著者らが開発した熱交換器能力の予測手法を適用し，単純な冷媒流路パターンを有する熱交換器について，フィン内熱伝導の影響と冷媒側の流量分配の影響とを同時に考慮した数値解析を行い，フィン内熱伝導による温度均一化が熱交換器能力に及ぼす影響を定量的に予測した．同時に，上記予測に対応する熱交換器を用いた単体試験を行い予測手法の妥当性を調べた．