ZDDPと無灰摩擦調整剤併用によるZDDP錯体構造変化がトライボロジー特性へ与える影響

摘要

一般に，潤滑油には複数の添加剤が配合されており，しゆう動部品における要求性能を満たすためには，それら添加剤の組み合わせや配合割合が重要である．潤滑油に処方される個々の添加剤の特性把握は，その添加剤の配合を考えるうえで必要不可欠であり，これまでに多くの研究が行われている．近年では，各添加剤の単独添加時における作用機構が次第に明らかになりつつある．しかしながら，先述の通り実際の機械部品で使用される潤滑油には添加剤が複数種混在しており，添加剤同士の相互作用や表面への競合吸着などにより，単独添加した試験油とは現象が異なると考えられる．例えば，添加剤を複合添加した際，相乗効果により高性能な潤滑特性が発現する報告例もあるが，逆に添加剤間の阻害により，潤滑特性の低下をもたらすという報告もある．より高性能な潤滑油開発には，複合添加した添加剤の作用機構の理解が重要な課題となる．