主流乱れが層流境界層中におかれたキャビティからの発生音および音源に及ぼす影響の直接計算

摘要

図1のような自動車のサンルーフやドア部,ドアとパネルの間のすき間のようなくぼみ(キャビティ)を有する壁面上を流れが通過するとき,しばしば自励振動および強いピーク性騒音が発生する.このようなキャビティ音は空力騒音として問題となり,低減手法の確立のための低減機構の解明が求められている.キャビティ音の発生機構について,Rossiterはキャビティ前縁から放出された渦がキャビティ後端に衝突するときに,音波を発生させ,この音波がキャビティ前縁からの渦放出を誘発するという流れと音の連成によるフィードバック機構を提案した.近年のキャビティ流れの制御について,Huangらはキャビティ前縁にプラズマアクチュエータを設置し,キャビティ流入境界層内にスパン方向の速度差を与え,音源となる大規模渦構造の発達をスパン方向に非一様にすることでキャビティ音の低減を達成した.このように流入境界層内を乱すことはキャビティ音の低減に有効であり,壁面からの制御以外に境界層内の流れを乱す現象として主流乱れが考えられる.主流乱れが空力騒音に及ぼす影響については,Golubevらが翼まわりの流れでの流れと音の連成によるフィードバック機構および翼端騒音に対する主流乱れの影響を数値解析により調査した.その結果,主流乱れが強くなると翼端騒音の周波数が低下し,主流の乱れ強度7.0%では翼負圧面におけるフィードバック機構が抑制されることを明らかになった.しかし,キャビティ音に対する主流乱れの影響は明らかになっていない.実験において境界層遷移を起こさずに主流乱れの乱れ強度と積分スケールをパラメトリックに変化させることが困難であるため,本研究では主流乱れの乱れ強度および積分スケールを変化させたキャビティ流れについて流れと音の直接計算を行い,主流乱れによるキャビティ音への影響を調査した.また,主流乱れによるキャビティ音の低減機構を明らかにするために主流乱れがキャビティ上流の境界層内の流れに及ぼす影響についても議論する.