高雑音下における近接2chマイクロホンを用いた位相干渉に基づく対象物までの距離推定 (セミブラインド処理による雑音対策の一試み）

摘要

様々な工学分野において，対象物までの距離は基本的かつ重要な情報である.従来手法では送信波と反射波の時間差を測定することにより距離を求めていた[1]が，反射波が送信波に埋もれる状況には適用できないため，送信波と反射波の位相干渉に基づく音響測距法[2]が提案された.実環境での測定においては雑音の混入は不可避であり，さらにスピーカからマイクロホンに至る測定系の影響も存在する.そこで，2つ（2ch)のマイクロホンによる観測信号のクロススペクトルにおける同期加算を用いた雑音低減手法が提案された[3].しかし，同期加算するためには複数回の計測が必要であった.一方，送信波と雑音は発生源が異なるために統計的に独立と考えられ，また2ch観測ではマイクロホンを2つ用いるために，源信号の独立性に基づく独立成分分析(Independent Component Analysis; ICA)に着目する。とができる.すなわち，混合過程を瞬時混合とし，瞬時ICAを適用し雑音を低減する手法を提案した[4].しかし，この手法では測定系の影響を取り除くことができていないため，測定系の影響のために0m付近に偽のピークが現れてしまう.本論文では，送信波を既知としたセミブラインド処理とクロススペクトルにおける加算平均を用いることで,事前測定無しで測定系の影響と雑音を除去する音響測距法を提案する.さらに，実音場における実験を通じて提案手法の正当性を確かめる.