離散時間周期時変系の非因果的スケーリングに基づくロバスト安定解析に関する一考察

摘要

本稿では，離散時間線形周期時変系のロバスト安定解析について考察する．離散時間周期時変系は離散時間リフティングを通してあたかも時不変系であるかのように取扱うことができ，そのような仮想的に定義される時不変系に基づくことで，周期時変系のロバスト安定性が解析できる．また，そのようなリフティングに基づく取扱いのもと，因果的／非因果的周期時変スケーリングが自然にロバスト安定解析へ導入できる．ここで，非因果的スケーリングは，因果的スケーリング（リフティングを介さない枠組での単なる周期時変スケーリング）よりも自由度が高いため，より有効な手法となっていることが期待され，数値例を通してその有効性が確認されている．しかし，どのような状況下のもと，いかにしてスケーリングの非因果性が効果を発揮するかは，現状で十分には議論されていない．本稿では，周期時変系のロバスト安定解析における理論的礎を発展させるべく，周期時変スケーリングにおける非因果性の効果について詳細に議論する．さらに，どの時刻を基準としてリフティングするか，というタイミングが，ロバスト安定解析に与える影響についても考察する．