火星着陸探査計画における移動探査ローバのシステム検討状況

摘要

表面移動探査技術であるローバは，火星着陸システムの着陸精度（数km から数十km 程度）を補償しつつ，より科学的価値があると期待できる地点へ移動し，詳細な探査を行うことが可能である．すなわち，ローバは「行きたい場所へ行き」，「見たいものを間近で見る」ことができ，科学観測における有用なサイエンスツールとして位置付けることができる．ローバを用いた火星探査の事例としては，米国のマーズ・パスファインダ計画においてソジャーナと呼ばれる10.6 kg の車輪型ローバが初めて火星表面を移動した．ただし同ローバは通信や周囲の地形認識などは着陸機に依存していた．スタンドアロンの火星ローバとしては，2004 年に火星に着陸した2 台のMarsExploration Rover（Spirit およびOpportunity）が最初である．このうちOpportunity は2014 年8 月の時点において，40.69 km の走行距離に達している(1)．さらに2012 年8 月には，重量約900 kg の大型のローバCuriosity も探査活動を開始しており，火星の岩石に対してドリルを用いた穿孔，サンプル採取をおこなうなどの成果を挙げている．