映像の視聴回数による印象の変化と生理指標の関係分析

摘要

近年，経済発展により得られた大量生産・大量消費社会から，質的消費社会へ移行している．なぜなら，現在は生活の質を家や車などの物質的な面から量的に捉えるのではなく，趣味や健康などの精神的な豊かさを質的に把握しようとする傾向が強いためである．したがって，現代の消費者のニーズに応えるには，個人の精神的な豊かさや健康などの質的な要因を正しく評価する事が重要である．消費者ニーズの把握にはアンケートやインタビューなどの主観的指標が用いられている．これらは意思決定の結果を把握し，印象を推定することが可能である．しかし，我々は普段様々な心理過程を経て意思決定を行っている．そのため，主観的指標ではその心理過程を定量的に観察することは困難であると考えられる．Johanssonらは被験者に人物の写真を二つ並べて提示し，魅力的な方を選ばせた．その後，被験者に選択された写真を渡して選択を行った理由を回答させるという意思決定課題を行った．その際に被験者が選ばなかった方を渡して選択理由を尋ねたが，全体のうち74％の被験者はそれに気づかなかった．このことから，意思決定時の要因と決定後の解釈が必ずしも一致するとは限らないことがわかる．