大学生の歴史文化観光促進に向けた情報提供のあり方に関する試論：埼玉県川越市における社会実験を事例として

摘要

一般的に若者の歴史文化観光に対する意識は高いと報告されている(1)。しかし、窪田(2)（2017）が重伝建地区の修理された町家の街路景観のみを観るのは平板で浅い観光だと批判するように、歴史文化観光の内実は様々であり、観光客が行っている歴史文化観光の具体的内容にまで言及しなければならない。この観点において、本稿の3章で明らかにする、筆者らが実施した大学生に対する川越観光の意識調査によると、重伝建地区の歴史的街並みを見て歩いたり、沿道の商業施設での買い物や食べ歩きを楽しむといった行動にとどまり、より多様で広範に及ぶ川越の地域らしさや価値を享受するような観光が実現されているとはいいがたい。