住宅地域の景観施策における「地域の共感・共有」の効果の検証 ―世田谷区・地域風景資産および住民団体の活動を対象として―

摘要

住宅地域の景観施策は、特筆すべき景観資源に乏しく、地域の様々な主体の利害も絡みやすいといった課題を抱えている。そのような中、東京都世田谷区では「地域風景資産」と呼ばれる施策を行っている。施策は、地域で大切にしたい風景を住民が推薦し選定を行う「地域風景資産の選定」と呼ばれる仕組みを主としているが、これはただ風景を選ぶのみではなく、推薦した住民自身に対しその風景を守り育てる活動（「風景づくり活動」）を行うことを求める仕組みとなっている。また、そうした活動の展開を担保するため「地域の共感・共有があること」を条件としている点が特徴である。施策ではこの仕組みを通じて、住民主体の活動を、地域の同意を背景としながら展開させ、区全体の風景づくりを進めていくことが試みられている。