ロジットモデルを用いた利用可能チャネル二段階推定法

摘要

近年，周波数資源の枯渇問題を解決する技術として，コグニティブ無線技術が注目されている．コグニティブ無線システムでは，その周波数に本来割り当てられているプライマリユーザ（PU）を保護した上で，二次的にセカンダリユーザ（SU）が周波数を共用利用する．このPU保護の一手法として，SUによるPUの周波数利用状況検出のためのセンシングが提案されている．しかし，PUの利用周波数帯が数多くある中で，無作為なセンシングを実行することにより，利用可能な周波数帯の検出に時間を要したり，利用できたはずの周波数帯が他のユーザに利用されてしまったりする問題があった．これに対し，PU周波数帯の占有率に基づく，効率的なセンシング手法の検討がなされてきた．これらは，PUの占有率が最小の周波数帯からセンシングを開始することで，素早く空き周波数を探索する手法である．しかし，占有率を直接観測した利用状況予測では，参照パラメータが少ないため，急激な通信環境変化に弱いという課題があり，占有率予測精度が下がり，空き周波数の探索精度が劣化するという問題があった．　本稿では，従来手法の問題点を解決するために，ロジットモデルを用いたPUの周波数利用状況の予測を提案する．ロジットモデルとは，交通工学やマーケティング科学にて利用されている統計分析モデルの一つである．個人の過去の選択状況と行動特性から，ある状況下における選択状況を予測することが可能となる．提案手法では，PUをグループ分けし，それぞれのグループに属するPUの過去の通信サービスの選択状況とその際のPUの状態から，そのグループに所属するPUの通信サービスの選好性を考え，周波数利用状況を予測する．そのため，同一のグループに属するユーザの数の変化が予測可能であれば，ユーザ全体がどのように通信サービスを使うかの予測を行うことができる．本手法は，PUユーザの行動特性を集約し，ロジットモデルによりユーザ数の変化を予測することになる．そのため，通信オペレータ等のPUの行動を収集可能なサーバが主体となりPU利用の周波数利用状況の予測を行い，SUに対してPUの周波数利用状況を通知することを想定する．このような構成を持つことで，提案手法は，グループに属するユーザ数が急激に変化した場合でも，PU行動特性を集約することで，PU占有率の変化をロジットモデルにより予測することが可能となる．本稿では，本手法の有効性を確認するため，計算機シミュレーションによる評価を実施した．結果として，グループに属するPUの数が急激に変化した場合でも，PUの通信サービスを適切に予測することが可能となり，低い占有率を持つ周波数をリストアップできることを確認した．