《造血幹細胞移植療法の適応拡大》HLA不一致移植とその倫理

摘要

世界的な骨髄移植の黎明期の1960年代，HLAの概念，知識　 測定法などが不完全であった．このころ，HLA検査がなされないまま，あるいは不完全な検査のみで，同種骨髄移植が，一部の施設で実験的になされていた．1968年，Matheはこのような形で移植された21人の治療成績を報告している．それによると，6人が拒絶で10人がGVHD（graft－versus－host disease）で死亡した．また，4人がGVHDは軽度であったが，白血病の再発で死亡した.残りの1人は20ヵ月生存したが，ヘルペス脳炎で死亡した．1970年代に入り，Thomasらが中心になり，HLAを一L致させたドナーより，骨髄移植が行われるようになった．1977年，Thomasらの報告によると，100人のendstageの白血病患者に対して骨髄移植が行われ，13人の長期無病生存者を生み出した．これにより，同種骨髄移植という治療法が，白血病に対して治癒をもたらす能力を有していることが実証された．