指紋の統計情報を利用した合成ウルフ指紋の構成と理論的評価

摘要

現状のバイオメトリクス認証システムに対する評価は認証精度によるものが主流であるが，高い認証精度を達成したシステムが高い安全性を達成しているとは限らない．本稿では，人間の指紋のマニューシャの角度分布が一様でないと仮定してRathaらの提案した照合アルゴリズムに対するWAPの定理を与え再計算し，その下界を与え，裏付けとなる実験を行った．この定理によって，十分少ないマニューシャ数でも高い成功確率を示すウルフ攻撃が可能であることが示された．また，照合アルゴリズムをスコアベース方式に変形し，別な方式でウルフを構成し，WAPが高くなることを示す．よって，このウルフ攻撃はより複雑化した照合アルゴリズムのウルフ攻撃に対する重要な足がかりになると期待される．