人工シャペロンの創製と生体分子機能制御

摘要

核酸は電荷密度が高いポリアニオンであり、その高次構造形成はポリアニオンとしての性質が反映され、とりわけ核酸二重らせん形成に代表される自己組織化においては、抑制的に働く。したがって、ポリアニオンとしての性質を緩和することで核酸の自己組織化を促進できると考えられる。丸山氏は反対電荷をもつポリカチオンとの高分子電解質複合体形成に着目し、核酸のポリアニオンとしての性状を制御することを考えた。親水性の側鎖を高密度に導入したカチオン性くし型共重合体(CCC)では、可溶性で核酸の高次構造を維持したs-IPECを形成することを見いだした。CCC は二重らせんDNAや三重らせんDNAなど核酸ハイブリッドを効果的に安定化することを明らかにした。さらに、CCCは核酸ハイブリッドの形成速度を高めることが安定化の速度論的機構であることを示し、分子シャペロンとして機能することを提案した。実際に、核酸シャペロン活性の指標となる核酸鎖交換反応を天然の核酸シャペロンタンパク質以上にCCCが促進することを見いだした。さらに、核酸ハイブリッドを準安定構造から最安定構造に構造転移させることを明らかにし、CCCの核酸シャペロン機能を実証した。