亜熱帯野草地における与那国馬の放牧行動

摘要

与那国島に生息する与那国馬は日本在来馬の一種で，その 多くが海岸沿いのコゥライシバ優占草地で周年放牧されてい るが.その行動生態についてはあまり知られていない。与那 国馬の放牧行動を把握することは適切な放牧管理を行うため にも重要である。そこで本研究では，野草地における与那国馬の放牧行動， 特に維持行動に着目して調査した。与那国島と同様な粗放管理で与那国馬の雄1頭（4歳齢-体重184kg),雌1頭（1歳齢、体重150kg)を亜熱帯野草地 に放牧した。調査は，2005年6月28日-30日までの3日間， 10月26日から28日までの3日間の計6日間行い，午前6時か ら翌日の午前6時までの連続24時間行動観察した。調査項目 は，摂取行動（食草，飲水，舐塩）、休息行動、移動'身繕い 行動、排泄行動，あくび，スノート，おなら等であった。与那国馬の1日の放牧行動において，食草行動は，もっと も長く，雌馬，雄馬ともに，830-848分の範囲であった。次 に休息行動で415-490分の範囲であった。雄馬の横臥位休息 は雌馬と比べ有意に長い時間であった。身繕い行動は50-71 分の範囲であった。食草行動は，早朝.昼'夕方、深夜に多く観察され，14時 には著しく少なかつた。休息行動は特定の木の下でよく観察 された。立位休息は雌雄ともに1日を通して見られたが特に 14時に多く見られた。また伏臥位休息と横臥位休息は，夜 から早朝にかけて集中して多く見られた。身繕い行動は， 雌雄馬ともに1日を通して見られ，排糞は7-46回の範囲で あった。