巨大災害救命情報共有のためのハイパーMETHANEレポーティングシステム：デザイン構想 - NATO開発METHANEレポーティングの国際対応版への拡張

摘要

一般に災害時の救命率を上げるには，発生から72時間が重要だとされる．この時間内に救助を必要とする人の位置と状況（倒壊家屋の隙間や橋の下など）を特定【サーチ】し，そこから救出【レスキュー】し，さらに最適な医療処置を実施することが求められる．一方，同じ72時間内でも初期と終期では，存命率は1／3に下がり，起急性期（発災後24時間）の作業が減災に大きく影響すると言える．ところが，東日本大震災では通信等のインフラの壊滅地帯が発生し，発災直後の混乱が大きく，現状把握すら困難な状態になった．現在，巨大災害に際し，日常の通信インフラが破壊された時にでも，必ずつながる通信手段の用意が迫られている．これを受け，災害状況を正しく捉えるために衛星通信を利用しようという掛け声は多く存在する．特に，要救助·要救命者の存在を確認する場合，本人もしくは現地からの情報発信が必要であり，準天頂衛星に搭載される双方向通信機能に対する期待が高い．一方，準天頂衛星上の双方向通信装置で送信可能な情報量や極めて小さく，被災現場の状況を動画像や音声で知らせることは叶わない点を問題視する意見があるが，巨大災害時の特に急性期においては，即断即決が救命には求められることから，救命と救助の専門家のニーズは，洗練化されたテキスト情報の共有となっている。本構想は，①巨大災害発生の際の超急性期に，依然として救助·救命に必要な情報が収集できていない現状に着目し，②準天頂衛星双方向通信を活用した，③救助と救命の専門家の意思決定に資する情報を効率的に提供する災害医療情報システムの構築を目指すものである．特に，要素技術として災害情報集配信の世界標準を採用していることから，構築後のシステムに搭載した機能は，米国らとの国際協力を前提とする救助活動に直接貢献できるものとなる．