主働と受働のはなし

摘要

大学で，土質力学を教え始めて22年になる。 土圧の章 で教えるべきポイントは，主働土圧（Active earth pres-sure）と受働土圧（Passive earth pressure）の区別で ある。 ところが，この概念が学生にはなかなか理解して もらえない。 そこで持ち出す話が，「土の身になって」 考えてごらんである。 土の身になると，自分を支えてい た壁が逃げて行ってしまうと，自らの自重によって土は 破壊してしまうことが実感できる。 このとき，逃げた壁 に及ぼす土圧が主働土圧である。 また，自分を支えてい た壁が自分を押し込んでくると，自らの自重に打ち勝っ て押し上げられて土は破壊する。このとき，押し込んで きた壁に及ぼす土圧が受働土圧である。 このように， 「土の身になって」考えてやると，土質力学の考え方を 理解する上で役に立つ場合が多い。また，この考え方を 英文文型で言えば，土を主語にしたときの能動態文が主 働土圧，受動態文が受働土圧である。