対数尤度コヒーレント光受信機の開発

摘要

現在実用化されている光ファイバ通信は強度変調直接検波方式である．この方式では伝送路で発生する波形歪みを補償するために各種の光分散補償器が必要とするが，伝送速度が100Gbpsとなると補償が困難となる．そこで近年，従来の光ファイバ通信に比べより高速で大容量な通信を実現するために，コヒーレント光通信技術が盛んに研究されている．中でもデジタルコヒーレント受信方式は信号光と局発光間の位相オフセットや光分散補償をデジタル信号処理によって補償することが可能であり，また光位相同期ループを必要としないために非常に扱いやすく，実用化が期待されている．しかしながら，デジタルコヒーレント受信方式では高速なアナログデジタル変換回路（ADC）が必要不可欠である．そのため通信速度を高速化するには高速なADCの開発を待たなくてはならない．そこで，本稿で紹介する対数尤度コヒーレント受信機では，復調の際に多ビットのADCを使うことなくサンプリングデータを確率的に処理することにより復調を実現する．これにより従来のデジタルコヒーレント受信機以上の高速通信が期待できる．