射影型適応アルゴリズムの新展開: 射影劣こう配法による統一的視点とその応用

摘要

近年，高品位音響エコーキャンセラなど“非定常過程の適応信号処理技術”に村する要請が高まるにつれ，原理上，ランダム過程の統計量の推定値を要求しないNLMS法／学習同走法，アフィン射影法／AP法／APAやそれらの変種（例えば文献（5）～（10））が実効的な役割を演じるようになっている．特に，NLMS法は，未知系の入出力信号の各瞬時値から順次決定される超平面への直交射影の繰返しによって実現され，低計算コストでLMS法の収束性能を改善している点が好まれ，広く利用されている（NLMS法は，H~∞最適基準を達成するロバストなアルゴリズムとしても注目されている）．ところが，音声信号のように相関の強い信号が入力される場合には，射影の対象となる超平面の法線方向の変化が小さくなり，収束速度は著しく劣化してしまう．アフィン射影法は，入出力信号の複数の瞬時値から順次決定される次元の小さな線形多様体（正確には小文の瞬時最小二乗近似集合に相当するが，複数の超平面の共通部分集合と考えてよい）への直交射影を繰り返すことによってNLMS法の収束速度の向上を図ったアルゴリズムである．しかしながら，次元の小さな線形多様体への射影は，（ⅰ）計算コストの増大，と（ⅱ）雑音環境下での収束速度の劣化，という新たな問題を引き起してしまう（例えば文献（6），（7）参照）．