Peritoneal lymphomatosisによって腹部コンパー トメント症候群を来したB細胞性リンパ腫の1例

摘要

症例は60歳男性。X-2年3月にクローン病と診断され生 物学的製剤を含めた治療で寛解を維持した。X年6月に腹痛 と下痢が出現しクローン病再燃が疑われたが,CTで広範な 腹膜肥厚と腹水貯留があり,腹水細胞診でB細胞性リンパ 腫と診断された。直ちにEPOCH-R療法を導入したところ, 開始48時間後に腹部が急激に緊満し,頻呼吸や乳酸アシ ドーシス,低血圧を来した。CTで腸管に広範な造影不良域 が出現し,膀胱内圧の上昇(25mmHg)から腹圧亢進が推 定され腹部コンパートメント症候群(ACS)に伴う循環不全 が考えられた。人工呼吸器管理,CHDFを含む集中治療を 行うも病態改善に至らず死亡した。Peritoneal lymphomatosis は腹膜や大網へのび漫性浸潤や多量腹水を呈する稀な病 態である。急速進行例では重篤なACSを来し致死的な転帰 を辿る可能性があり,開腹減圧術を含めた早期治療の検討が 望まれる。