109 ー臨床:痛み?慢性疼痛 オピオイド依存症センターでのNADA鍼灸治療報告アメリカ鍼灸治療50年の変遷

摘要

【目的】オピオイド過剰摂取による死亡者が2017年4万7600人に達し、アメリカ政府は同年10月「オピオイド危機」緊急事態宣言をした。連邦政府が州政府と共に進める対策の一つが薬物依存症治療センターで、多くはNPOによって運営されており鍼治療も行われている。そこで、演者が薬物依存症治療センターで行った鍼治療の取り組みを報告する。【方法】米国ワシントン州オピオイド依存症治療センターEvergreen Treatment Centerで、心理学者、ソーシャルワーカー、看護士、医師、鍼灸師で構成された治療チームに加わり行った鍼治療について、その内容を調査し、今後の展望について考察した。【結果】疼痛治療に使用されてきたオピオイド処方を他の鎮痛剤へ移行させるOpioid Misuseand Addiction Treatmentに基づき、鍼灸師は禁断症状軽減や精神安定治療のためNADAプロトコール(National Acupuncture Detoxification Association)を行つ。手法は耳介5ポイントを使った座位置鍼を30-45分行う治療であり、シンプルなプロトコールゆえ一度に10-15人のグループ治療が可能である。1996年アメリカ国立衛生研究所から鍼灸NADAプロトコールによる薬物依存症への治療研究が発表され注目を集め、それ以降多くの薬物依存センターでは耳介への施術が行われている。【考察?結語】1971年ジェームス?レストンによって東洋医学?鍼灸治療がアメリカに紹介されてから50年が経過し、現在様々な医療現場で鍼灸治療が行われている。オピオイドクライシスにより、今後さらに多くの国民が鍼治療を受けることが予想される。2020年1月トランプ政権は年金受給者への腰痛鍼灸治療保険適応を開始すると発表した。固定概念にとらわれず、新しきもの良きものを受け入れ取り入れるアメリカでは鍼灸師の活躍の場は広がり、鍼灸師の地位は更に向上するであろう。