月評

摘要

コロナ禍となった2020年7月，パリ市は 「15-Minutes city」の構想を掲げ，大きな改革を 行っています.　集合住宅が高密度に建ち並ぶ都市 の中で，自宅から15分圏内の生活環境を充実させ ようと都市を空間の量ではなく，時間によって再編 成しようとさまざまな計画が実践されています.　こ の構想を提唱するカルロス·モレノ教授によるマニ フェストでは「15-minute cityは都市モデルである. より高密度でありながら人に優しく，〈永遠の不安 状態〉であちこちに急ぐのではなく，人びとがお互 いを知り〈挨拶〉を言い合える，都市のユートピア を描く」（パリ市HPより)と掲げています.「15-minute city」の4つの原則「近接性」「多様性」「密度」「偏 在性」に基づき，15分圏内に生活に不可欠な医療， 介護，教育，オフィス，公園，公共施設などを各 地域に充実させながら，それらの各1m~2から時間 利用や週末利用といった時間で区切った使用方法 を検討し場所を活性化させています. また都市内 では車道を減らし徒歩または自転車利用を促して， 都市生活者の時間を豊かにするような変革が起こっ ています.　これらの具体的な取り組みと実践によっ て，身近な環境が変わり，ゆとりのある時間の実感 が持てる.　空間の量を増やすだけではない，これ からの都市のあり方に希望を感じます.